AMANEのベースにあるのは「幾何学」の世界。
古代ギリシャの哲学者であり数学者として幾何学の基礎を築いたピタゴラスは、
鍛冶屋がハンマーで金属を叩く音をヒントに「ドレミファソラシド」の元となる
世界最初の音階を作り出したと言われています。
やがて調和のとれた音、形、色には数的な関係性が存在することを突き止めた彼は、
「万物の本質は数である」と後世に残る主張を展開しました。
その思想は、約1.618:1の黄金比に代表されるように現代の芸術や建築にも通じています。
図形や空間の真理を追求する幾何学と音楽は、数の法則によってつながっている。
音楽もデザインも、誰もが美しいと思えるものには数学的な根拠があり、
同時に、組み合わせや配列の違いで多様な広がりを持たせることもできる。
そう考えると、タイルの可能性を切り開いていくこのAMANEブランドが
「音楽」をテーマに据えることは、最も自然で腹落ちするアイデアでした。
そして、このプロジェクトが掲げる重要な使命が「職人の地位向上」です。
現在のタイル業界は、建築会社や設計事務所ありきの完全受注スタイル。
工業品としての画一的で均質なタイルを、いかに効率よく、安くつくるか。
求められるまま競い合い、仲間同士で体力を奪い合う構造が常態化しています。
能動的に未来を描き、変わるべき時が来ています。
職人が培ってきた技術や知識には、自分でも気づいていない価値がある。
それらを持ち寄り、発揮し、自由に提案できる場があれば
タイル業界は、より面白く、多様性に富んだ道を切り開いていける。
願わくば、この手に握りしめたAMANEの一片が、
100年後のタイル文化にとって大きな意味をもつと信じて。
1970年 東京都出身。芸術一家に生まれ育ち幼少より美術、芸術に親しむ。20歳のときに1年間イタリア・ギリシャ各地を歴遊、ローマ遺跡やビザンチン建築に興味を持ちタイル職人となる。のち、イスラムの幾何学モザイクに魅せられモロッコ・フェズのモザイク工房で2年間修行、モスク建設などに携わる。代表を務める株式会社Euclid設立当初は、卓越した施工技術とデザインからタイル制作までを一貫して行う異能のタイル職人として活躍し始めたが、現在では空間に華やかさと豊かさを提案する美術的装飾タイルに特化した美術タイル職人としてタイルによる表現の可能性に挑戦し続けている。2022年制作のジブリパーク「ジブリの大倉庫」中央階段のタイル装飾が話題を集めたことで、国内最大のタイルの祭典「CERASTA」 を主導、タイル文化を育む活動にも力を注いでいる。